帰ってきたヨガ日記(ヨガはしない)

高幡という人が書いています

飛行機の音、場所の音

東京の西、といっても東京都全体から見れば丁度真ん中あたりになるのだけど、そのあたりにある日野市に長いこと住んでいた。つい、3か月ほど前まで。
日野市には京王線と中央線、それに多摩モノレールが通っていて、僕の住んでいた高幡不動京王線沿いの駅だったから、小さいころに少し発展した街に行くとなると八王子に行くことが多かった。多摩モノレールが開通してからは立川へのアクセスが良くなり、それに合わせて立川の駅周りの発展も目覚ましいものがあって、それに反比例するように八王子の駅周りはさみしくなっていったように思う。今ではすっかり立川が多摩地区の覇者といった感じだ。
大学生の時にそれまで住んでいた団地が耐震の審査基準に引っかかって強制的に立ち退きということになった。全国で唯一の例だと当時聞いたのを覚えている。本当かどうかはちょっとわからない。
それから家族で中央線沿いに引っ越しをした。引っ越してから初めて自分の部屋というものを持たせてもらって、配信を始めたのもそのころだった。

それから大学生活、無職フリーター、就職などなどなんやかんやありながらもずーっとそこで配信したりお酒を飲んだりしていたのだけれど、昨年の夏ごろから引越の話が出てきた。日野市を離れて、今までとは全く違うところへ家を買う話だった。当初はそこに今まで通り僕もついて行く予定で、僕の部屋も設計図に用意されていた。

ただ、ちょうどその頃、長いこと付き合ってくれていた彼女、今の奥さんに結婚を切り出そうかなあと考えていたときだった。一応、それまでしていた仕事よりは条件のいい仕事に転職ができて、前々から目標にしていた貯金(些細なものだけど)もできたので、そろそろ言わないとな?と思っていたときに引っ越しの話が出てきた。

なんだかいろいろなタイミングが重なったし、これはもう家を出るように何かに仕組まれてるのではという感じで不思議だった。
彼女には結婚のお願いをして、ありがたいことにOKをもらい、そこからすぐに諸々の段取りを済ませつつ引っ越しも進めて……と去年の秋口から年明けまでドタバタしながらもあっという間だった。僕が奥さんと住み始めてから少しして、実家も新しい家へと引っ越しをした。僕の部屋は僕の本置き場兼客間として残っている。

なんでこんな話をしてるんだっけ、と思ってタイトルを見たら、書こうと思っていたことと全然違うことばかり書いていることに今気が付いた。
飛行機の音について書こうとしてメモ帳を開いたんだった。
引っ越すまで長いこと住んでいた日野市は飛行機がよく通る場所だった。そのためか、日野市や八王子市の学校は防音ガラスだったりエアコンの設置が充実していたりする。生まれてからずっと、飛行機はよく頭上を通過するものだし、時にはすごく低く飛ぶ飛行機の大きさに興奮するものだし、飛行機のジェットエンジンの音や飛行機雲は毎日とまでは言わないまでも、割と見かけるものだった。考えてみればすぐに分かることのはずなのに、引越をするまでこれはどこに行ってもそういうもの、人が住んでいればそこの空には飛行機が飛んでいるものだとなぜか思い込んでいた。そろそろ30歳にもなろうかというのに、はずかしいことに。
東京の西の方の日野市から、一転して東の方に引っ越しをしてきた。引っ越してしばらくは散歩する余裕もなかったけれど、最近やっと落ち着いてきた。先日、家の周りを散歩していたときにそこで初めて、飛行機を全然見ないなと気づいた。

引っ越してきて最寄駅を散策したりしたときにはあまり感じなかった新しい場所にきて新しい生活になったんだということを、飛行機が飛んでいないことでしっくりと感じられた。無いことで気づかされたことが妙に面白かった。